「保育体験学習における学習効果に関する研究−小学校の実践例をとおして−」

【目的】
 今日、学習において自ら感じ、考える体験学習の積極的導入が叫ばれている。また、以前から体験学習を重視してきた家庭科では、保育体験学習を導入することが中高家庭科の新学習指導要領でも記載された。保育体験学習は先行研究において、その有効性が明らかにされている。しかし、小学校においては「保育」学習が位置づけられておらず、その実践例は少ない。本研究は、小学校での保育体験学習に着目し、その教育的効果、および導入の意義を示すことを目的とした。

【方法】
 先行研究から保育体験学習の教育的効果を明らかにし、それに基づいて小学校における実践例を分析する。総合的な学習の時間で実践した学校と家庭科の授業において実践した学校の保育体験学習の指導計画、体験学習内容を整理し、児童に事前・事後のアンケートを行い分析した。また、1校においては学習後の感想文を分析した。

【結果および考察】
@中高の先行研究による教育的効果
 乳幼児との直接体験によって、親和感の醸成を育成する効果のみならず、自分の成長を育むことが明らかとなった。
A総合的な学習の時間における実践
 交流の中で幼児に対する肯定感と親和感が高められ、体験後の気持ちの変化において「好きになった」と答えた児童が多かった。幼児との交流でうれしいと感じることが、体験後の気持ちの変化に影響し、遊具などの媒介なしに直接的交流を行った児童において親和感の上昇が顕著に見られた。
B家庭科の授業における実践
 ほとんどの児童は、うれしかったこと、楽しかったことをアンケートにおいて記述し、幼児との交流を好印象的に捉えており、親和感を高めていた。また、プレゼントを幼児が肯定的に受け止めるか否かが、児童の幼児に対する気持ちへの変化に関わっていることが分かった。保育体験学習を行う事前の学習が、児童に保育体験への目的の認識と期待を持たせ、プレゼント作りによって幼児との距離を縮めるきっかけとなっていた。すなわち事前学習が重要であることが明らかとなった。

【まとめ】
 2つの学校の実践例から、「保育」学習が位置づけられていない小学生においても、さまざまな目的に応じた保育体験学習の取り組みの可能性と、保育体験学習を通して育成される能力の多様性が明らかとなった。保育体験学習は、小学生にとっても大きな教育的意義があると言え、今後積極的な導入が望まれる。